虐待は倍返し

両親に虐待された子供が親の介護をさせられたらどうなるか妄想してみました。

わたしだけではなかったんだ・・・

虐待されたからと言って、親が老後を迎えたら虐待する・・・

そんな妄想を持っているのはわたしだけはないんだ・・・

 

一瞬だけ車いすを放す

 

毒親という言葉さえあるらしい。

うちの親は正に毒親だ。

そして怪物だ。

 

だから介護はしない。

絶対にしない。

 

でも、もししなければならなくなったら・・・

 

やられたことを倍返しにする。

それは犯罪だ。

だから出来ない。

そこでわたしは妄想する。

でも、倍返しになっていない。

されたことより酷いことが思いつかないのだ。

 

母が寝たきりになって、脚に手が届かなくなって

そして痒がったら・・・

 

わたしは迷うことなく夾竹桃の枝を折って渡してやろう。

これで掻きなさいよ。

鋭く手折ることを忘れてはならない。

 

 

母は知っていた。夾竹桃には毒があると。

わたしが太ももまでのギプスをしている時、ひざの裏がかゆいと言ったら

「じゃあ掻けるようなもの探して来てやるわよ」と言うが早いか

彼女は外に出て木の枝を手折って来た。

「これなんの木?」

わたしが聞くと母は「大丈夫よー」

母には逆らえない。

「尖ってる方が掻きやすいでしょうよ」

 

わたしはそれをギプスの隙間に入れて掻いた。

しかし、すぐに異様な痛みを感じた。

「お母さん痛い」

「あんたが強く掻き過ぎたんでしょうよ」

痛い、痛いと泣くわたしに向かって、加減を知らないからだと母はあざ笑った。

「お母さん、これ夾竹桃じゃないの?」

「そうよ。」

「毒があるのに!」

「大丈夫よ、大袈裟ね。死にゃしないわよ」

痛みはずっと続いた。

熱も出た。

 

結局、ギプスを取り替える時、恐ろしく化膿した傷を見る羽目になった。

看護師も驚くほどだった。

いまもその傷は残っている。

母は言った。

「あんたもスネにキズ持つ女になっちゃったわね」

実際にはスネではない。膝の横だ。

 

あの女は絶対に承知の上で渡したのだ。

わたしを殺したかったのかしら?

 

 

 

さあ。お母さん、これで掻きなさいよ。

そう。夾竹桃よ。

お母さんが持って来てくれたのと同じ赤い夾竹桃の尖った枝よ。

あの日、お母さんがわたしにくれたのと同じ。

 

さあ、掻きなさいよ。

それとも・・・それでスプーンでも作ってあげようか?