父は犬を捨てることに罪悪感を持たない。
中学生の時。
弟が公衆電話から電話して来た。
子犬が後を付いて来るけど、どうしよう?
当時は分譲団地に住んでいた。ペット禁止。
でも、実際には飼っている人も多数いる。
連れて帰って頼んでみたら?と答えた。
弟は小さな茶色いコロコロした子犬を連れて帰って来た。
お気に入りの息子が拾ったからなのか、わたしには「元の場所に捨てて来い」としか言ったことのない両親が飼っていいという。
両親と弟で名前を決めた。
だが、世話はしない。馬鹿だから。
子犬はトイレの躾をしたり世話が大変だ。
でも母はしなかった。専業主婦のくせに。
間男に忙しかったんだろう。
(当時、母は薄汚い初老の糸屋のオヤジと不倫していた。)
散歩の行くのもわたしだけ。
結局一日一度一時間程度の散歩では足りないらしく、母がひとりいる昼間に吠えたり粗相をしたりしたらしい。
我が家は一階だった。母はわたしが帰宅するまでベランダの下に犬を括り付けた。
バカだ・・・・
すぐに管理事務所からクレームが来た。
そりゃそうだろう。
吠えるからと飼い犬をベランダの下に括る。
もっと吠えるに決まっている。
いわゆるバ飼い主ってやつだ。
ある日、学校からか帰ると犬はいなくなっていた。
飼い始めてから半年くらいは経っていただろう。
丁度、寒さが強まった頃だった。
わたしは必死で探した。
派出所にも出向いたが見つからなかった。
犬の散歩の時間は犬の捜索の時間になった。
結局、見つけてやることは出来なかった。
それから二十年くらい経った頃だろか。
母が言った。
「ホント、お父さんは情がないから。
自分勝手で思いやりがないからね。」
聞き流していたわたしに
「ほら、昔いた犬。あれ、お父さんが捨てたのよ。」
驚くわたしに
「保健所にやったんだったか、遠くへ捨てに行ったんだったか。
とにかく可愛くないからって捨てたのよ。可哀想に」
この女は自分のことを棚に上げてこういう発言ばかりする。
高校生の時、リビングに落ちていた避妊具をわたしが見つけた時には
「お父さんに強姦されそうになったのよ!」とわめいた。
不覚にも同情してしまったが、ただだらしないバカ夫婦なだけだ。
保身のためなら平気で嘘をつく。
だから、どっちが捨てたのかはわからない。
そういえば、次に飼った犬も可愛くないからとベランダで飼ったり
ロクに世話もしないくせに懐かないと小型犬を虐待していた。
わたしにも「可愛くないから捨ててやる」とよく言っていた。
父は可愛げない年寄りはどうしようもないと言っていた。
可愛げないうちの親たちがボケたら・・・・
捨ててもいいんだよね?