下の世話

ねえ。

お父さん。

わたしはあなたがたとえ寝たきりになっても下の世話はしないよ。

だって、もう済んでるでしょ。

あなたのそのゆるい下半身が

あっちの女、こっちの女とふしだらな関係を続け

そうそう・・・わたしと同じくらいの歳の部下だった時もあったよね。

それで狂った母親をあなたに押し付けられたから。

あれが下の世話だったと思っているの。

あなたのその締まりのない下半身のせいで

わたしはどれほど嫌な思いをしたと思う？

馬鹿だから想像出来ないか。

あなたの女房はね、狂言自殺を企てて真夜中だろうがおかまいなしに

嫁いだわたしに電話をして来て。

あなたは言ったよね。

「堪らんぞ」

わたしはこう答えたよね。

「そんなこと言わないで我慢してあげて」

そしたらあなたはこう言った。

「そっちへ呼べ。旅費はお父さんが出してやるから。もう限界だ。」

あなたに言われた通り、わたしは子育てが大変だから助けてほしいと

あなたの女房に頼んだの。

恩着せがましくやって来た彼女がわたしになにをさせたと思う？

探偵紛いのことをさせてね。

それをあなたに言ったら、あなたは怒ったよね。

「俺の立場を考えろ。馬鹿野郎」

言わせてもらえば・・・・

全部、あなたのゆるい見境ない下半身が招いたことでしょ。

そうそう・・・・

お母さんが嘘つきで根性が悪いって言ってたね。

でも、娘にもそうだったとは想像出来ないんだね。

バカだから。

あなたたち二人をわたしのことを心理的にも肉体的にも性的にも虐待したんだよ。

だからわたしはあなたがたの下の世話なんか絶対にしないの。

寝たきりになったら二人でなんとかするか、溺愛した息子に頼ってね。

わたしはロクに見舞いにも行かないでしょう。

あなたが実の母親にしたように。

自分の気違い女房の言葉を鵜呑みにして

曾孫の顔さえ見せなかったあなたの母親。

わたしのおばあちゃん。

彼女が誰かの悪口を言ってるのをわたしは聞いたことがない。

でも、嫁たちみんな、彼女の夫も一緒になって悪口ばかり言ってたね。

悪妻は百年の不作って言うんだよ。

おばあちゃんにそっくりなわたしを虐待し、おばあちゃんの死に目にも会わせない。

いまさら後悔しても遅いけど、おばあちゃんに曾孫を見せてあげたかった。

もうあなたたちに会うこともそうはないと思うけど。

全部、身から出た錆だって、ちゃんと理解しないとね。

ああ・・・・無理かな。馬鹿だから。

そうそう。

老婆心て読める？と、聞いたら二人して言ったね「うばごころ」って。

意味もわからなかったのよね。

わたしが笑いながら教えると「そんなもの知ってたって偉かねえ」って

怒っていたっけ。

バカだから知らないんだね。

孤独死や高齢者への虐待は他人事じゃないと

いまからちゃんと覚悟していてね。